2013年2月24日日曜日

こえシネマ第3回 レポート(後編)

前編からの続きです。)

休憩をはさんだ後の第二部では、国道45号線と青森県、岩手県、宮城県の沿岸部沿線を車載カメラで撮影した「ルート45 フルスロットル」と「測量技師たち」の上映を行いました。

第二部は「音と映像」をテーマにしていて、「ルート45」には車載映像に次々と多様なジャンルの音楽が付けられていたことから、会場のオープンスクエアでは、通りすがりに足を止めて映像を見ている人もかなり見受けられました。
続けて上映した「測量技師たち」は、毎回こえシネマで取り上げてきた作品ですが、今回はいつもより大きいスクリーンを使うということで、音量を上げたフルボリュームバージョンでの上映となりました。


上映後には「測量技師たち」の整音を担当された彌榮裕樹さんから、撮影時に録音したものが使えるような音ではなかったため、一から音の景色を作らなければならなかったことや、映っているロケーションとその中で演じる俳優たちの姿を基にしながら、音で表現しようとした景色の解説がありました。また、震災前にこの辺りを彌榮さんが訪れていて録った音も一部使用されているという話も出てきました。


今回のフルボリュームバージョンで、彌榮さんが意図した音による景色というのは、より鮮明に感じられたかもしれません。実際に、会場からは「何度か『測量技師たち』を見てきているが、こんなショットがあったかなと思うような、音によって違って見えたシーンがいくつかあって興味深かった。」という声が聞かれました。

 2作品を比較して、「『ルート45』は、音に気をとられて映像が残らない感じがしたが、『測量技師たち』の音楽は映像を印象付けつつ、かといって感情を強要するような押しつけがましさもなかったので、落ち着いて見ることができた。」という感想もありました。それに対し、「測量技師たち」の音楽を担当された森谷将之さんからは、「音楽をやっている以上、エモーショナルなものや若干のあざとさはあるものと思っているので、出てきた感想が意外だった。もちろんバランスなどは考えたが、自分の中ではまず第一に映画音楽を作るという意識だったので、あえて感情を排すとか、押し付けることをする・しないなど考えていたわけではなかった。」という話がありました。

このやり取りに関連して、「『ルート45』を見ていて、知らない場所が映っているときには、音によって映像が頭に入っていかないということは私も感じたが、よく知る場所が出てきたときには、やはり映っているものに意識が行って、その時には音は関係ない、聞こえないような状態になっていた。自分の知っている場所の映像だと、音は聞こえなくなったり、より強くなったりするのかもしれないと思った。」といった感想や、「以前にも『測量技師たち』を見ているが、今回は一つの映画としてとらえてある程度の距離を持って見られたので、付けられている音楽についても冷静に解釈ができた。しかし、先ほどの話に出てきたように、知っている場所の映像だと音の聞こえ方も変わってくると私も思ったので、陸前高田に住んでいる人たちには複雑な感情が生まれるだろうなと思う。」といった感想も出てきました。



第二部のトークでは、音と映像から感じることは受け手によって違うのは当然のことながら、他の人の感想を聞くことで新たな気付きが生まれ、音と映像の関係についてより考えを深められる話が交わされたように思います。

最後は、「測量技師たち」をサイレントで上映し、そこに森谷さんの生演奏が付けられ、これまで3回にわたるこえシネマをじっくりと反芻するような時間とともに、約4時間の上映会の幕は閉じました。







 

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